グアム・サイパン太平洋の伝説


グアムを救った女性

グアムを救った女性 HOW THE WOMEN SAVED GUAM ②

 もう誰も話をする者も居なかった。途端に子供が叫び出した。
 「あっ!今、見えたよ! 怪物だ! 物凄く巨大な鳥と魚の格好をした怪物だ、おまけにクジラみたいに大きいんだ、僕達の所まで泳いでくる!」
 男は波打ち際まで急いだ。「いたぞ!あそこだ!」

 今度こそ皆の前に現れたその恐ろしい正体は…大空の様なスカイブルー、太ったマンゴ―の様につややかな緑色そして光り輝くサンセットの様な黄金色を全身から発した巨大パロットフィッシュの怪物であった。

 人々は喘いだ。彼らは、その白く一つが大人の頭ほどの大きさもある怪物の歯が、大きな口からきらりと見え隠れするのを見た。
 突如怪物がリーフの一部にガブッ!と食らいついた。そして大きな尻尾をひるがえして、海の奥深い洞窟へと消えていった。
 男は歩いて村へ戻り、皆で恐怖に身を寄せ合った。

 「一体どうやったらあんなに大きな魚を捕まえる事が出来るんだ?あいつが一度尾を振るだけで、間違いなく俺達の頭は吹き飛ぶぞ。」

 島で織物をするパビリオンには女達が集まっていた。女達は皆、一番年下で輝く瞳を持つメイデン、そうあのモンスターを最初に見つけた女の子。
 それから深い皺の刻まれた皮膚の奥に隠れたような眼を持つ老婆の事も、全員がそこに揃うまで待ち続けた。待っている間に、皆は長く裂かれたパンダナスの葉を、内に外に、内に外にと繰り返し編み続けた。編みながら、彼女達は祈りを唱え、そして考えながら編み、じっと待ち続けた。
彼女達の指は器用に葉でリボンを編み続けていった。皆の祈りを唱える希望の声が、一編み一編みにしっかりと込められていった。

 今、モンスターパロットフィッシュはこの島を食べ始めていた。これは先祖達が我々に与えた、もう一つの罰である。先祖達の怒りは、この島に干ばつと飢饉をもたらした。
 どうしたら我々はこの怒りをなだめる事が出来ると言うのだ。
 一体どれだけ、何を犠牲にすれば気が済むのだ。

 オオオオオオオオオー! ホラ貝はまた鳴り響き、波打ち際では再び体中をココナツオイルでぎらぎらと照からせた男達が、一斉に銛と戦闘具を持ちだした。それがぶつかり合う度にガチャガチャと音が立つ。水の下では更にそれらがぶつかり合い、勢いに乗った男達は跳ね上がる様にカヌーに飛び乗り怪物が泳ぎ去った後を見据えた。
 巨大な魚が泳ぎ去っていった後は、波が岩礁まで大きくさざめき立ち、まるでトビウオの大群が飛び跳ねているかのような光景になっていた。