グアム・サイパン太平洋の伝説


タガ王の伝説

タガ王の伝説 THE STORY OF TAGA⑤

タガ王

 タガの最初の息子、yonanaiはとても勇敢で強い青年へと成長していきました。
 しかし彼の体力は彼の父親には及びませんでした。その後、また何人かの息子が生まれ、ある日、タガにとって最後の息子が誕生しました。
 この最後の息子となる赤ん坊は、生まれた時から、他の息子達とは何から何まで異なる異常な強さ見せました。

 彼が5歳になった時は、既に他の兄弟達の誰よりも更に強くなっていました。
 ある暖かい美しい日の事です。一番下の息子がビーチへ行き、冷たい水の中で泳ぎ始めました。浜辺へ戻ってくる途中、彼はpanglao【ヤシガニ】を見つけました。彼は父親にロープをくくり付けてくれるように頼みました。タガはそのヤシガニを麻ひもでくくりつけ、そのまま家で仕事を続けました。
 しばらくたった頃、タガは自分の息子が呼んでいる声が聞こえました。
 「父上、早く来て助けて下さい!急いで!!」タガは自分の家の外を見まわして、ひもがほどけている事に気付きました。ヤシガニは既にフィールドを越えて素早く駆け出し、椰子の木の下の穴に逃げ込んでいく所でした。
 息子は「父上、早くこの椰子の木を倒して下さい。僕がカニを採るのを手伝って下さい!!」と叫びました。
 タガは答えました。
 「私はこの木をつい何年か前に植えたばかりだ、見てご覧、まだこの木は芽吹いたばかりだ。それを倒す事などもちろんできないよ。他のpangaloを探すんだ!」
 息子はひどく興奮して叫びました。
 「僕は他のカニでは嫌です!このヤシガニじゃないと嫌だ!!」
 彼はそう言うと、木に腕をまわして、一気に地面から引き抜いてしまいました。
 そして何事もなかったかのように、ヤシガニを捕まえると、そのまま遊び始めたのです。
 タガは今見た光景に非常に驚きましたが、既に兄弟の中でこの末の息子が一番強いと知っていました。
 突然、烈火の如く怒りの炎が彼の全身を駆け抜けました。考える間もなく、タガは息子に走り寄り、彼を掴み、そして殺してしまったのです!

 それはあまりに唐突の事で、我に返ったタガは次は悲しみの渦に飲み込まれました。
 「何という事だ、自分はたった今何をした!?!」タガは泣き、雄叫びをあげました。
 「しかし、やがては自分が殺されていた事だろう!」
 その時から、タガにとって「幸福」の持つ意味が大きく変わりました。彼の妻は、深い悲哀にくれ、心を痛めてすぐに亡くなってしまいました。タガの一番末の娘は、弟と母を続いて亡くした悲しみに打ちひしがれました。彼女は母の優しい態度や、弟の楽しい笑い声を思い浮かべながら、とても悲しんでいました。

 ある夜の事、彼女の苦悶な思いはもはや抑えきれなくなりました。彼女は父の銛で、寝ている父親の息の根を止めてしまいました。
 またもや、最愛の人間の手で、その命が幕を閉じる悲劇が繰り返されたのです。